病理・法医学教育イノベーションハブの構築

本プログラムの目的は、①病理・法医学を志す医師の育成強化、地域医療への貢献として②市中病院で専門医を取得して診療に従事している医師を対象とする社会人大学院の拡充、そして③臨床各科の専門医と基礎医学への進路を希望する医師を対象に専門医取得のサポートを行って、研究と地域医療の両面から医師不足解消に貢献することです。このため、千葉・群馬・山梨の三大学連携によって病理・法医学研究医育成のプラットフォームを整備し、教育イノベーションハブの構築を行います。

 本プログラムを履修いただくことのメリットは、病理・法医学研究医プログラム修了者のキャリアパスの明確化にあります。このため同プログラムでは、病理・法医学研究医の礎となる基礎と臨床医学の知識および先端技術の取得、基礎医学の成果を臨床へトランスレーションする際のリーダーとして必要なすべてを学べる体制を提供いたします。例えば、教育イノベーションハブは病理・法医学研究医の育成に必要な人的・物的リソースの共有を行いますので、各大学とその関連病院や部局をこえたOn the Job-Trainingを経験し、実践に即した知識と経験を取得することができます。これに加え、三大学の連携により確保する「修了者の希望に合うポジション」により、病理医・法医としてのキャリアスタートを支援いたします。

 このように、病理・法医学研究医としての実力を培う環境整備と、終了後のキャリアパスを明確にした病理医・法医育成のプログラムを開始いたしますので、ご参加をお待ちいたしております。

法医学AIセンター

 群馬大学附属病院新中央診療棟の建設に伴って、最新鋭の診断機器が導入される運びとなり、従来使用されてきたエックス線CTが余剰のため、廃棄処分されることとなりました。しかし、「まだ十分に使えるCTがもったいない」という素直な想いがありました。その一方で、エックス線CTを用いて解剖献体を断層撮影し、その画像イメージを見ながら、同一献体の解剖を行うといった、新しい解剖学実習を実施してみたいとの希望もありました。さらに、海堂尊氏の著書「死因不明社会」で指摘されている、死因究明に対する社会的な要求の増大もありました。
 以上のような背景を踏まえ、オートプシー・イメージングセンター(以下、Aiセンター)が医学系研究科に設置される運びとなり、1列ヘリカルCT(東芝社製Asteion/KG)を使用して、平成20年(2008年)10月から運用が開始されました。
 法医解剖においては、死後画像検査の導入により、以前は診断困難であった気胸、空気塞栓、脊椎骨折等の診断が可能となり、画像情報を利用することにより解剖の効率化が図られ、精度を増した死因検索が可能となっています。また、死後画像から構築された3Dイメージは裁判員裁判資料として活用されています。このように法医学においては、古典的な解剖手技に死後画像CT検査を加えた統合型の死因検索を実践し、解剖検査を深化・高度化することができました。
 上述のように、Aiセンターの業務内容は医学教育から社会貢献と幅広く、また、死後画像検査の導入は法医解剖と解剖学教育において明らかに有効でした。この取り組みは群馬大学において全医学部的な支援を得て実施されていますが、これが他の大学におけるAiセンターとの相違点であり、当Aiセンターが成功している理由のひとつであると言えます。

県内の関連病院を網羅した病理診断科研修プログラム

○プログラムの理念

 群馬大学医学部附属病院病理部病理診断科を基幹施設とする専門研修プログラムでは、豊富な指導医による充実した指導と多彩な症例を経験することにより、安定して確実な診断を行える技能を習得することに重きを置いています。一人の専攻医を常に複数の指導医が指導・評価を行うことにより、専攻医の技能習得状況を正確に把握しながら、適切な症例数を偏りのない内容で提供することが可能であり、各専攻医を信頼に足る病理専門医に確実に育てることを目指しています。

○研修プログラム

 本プログラムでは、基本的に専攻医は大学院に進学していただき、大学院生として病理研修と解剖をしながら、研究も行うスタイルとなっています。一方で、すでに医学博士を取得済みの方、大学院に進学せずに病理研修に専念したい方、あるいは他の専門領域から病理専門医への転向を目指す方に対応したコースも設けています。このスケジュールでは各施設(病院)での研修と大学での研究を並行して進めるために、無理なくプログラムを消化できるような内容の構成となっています。1年目から充実したプログラムに則って研修をきちんと行い、2 年目、3 年目でも大学院生としての研究を進めるとともに、しっかりとした病理研修を行います。大学院に進学しない場合や、途中から大学院に進学する場合であっても、研修内容は同等なものを用意しています。

本プログラムにおける施設分類の説明(各施設に関しては連携施設一覧を参照)
基幹施設:群馬大学医学部附属病院病理部病理診断科
連携施設 1 群:複数の常勤病理専門指導医と豊富な症例を有しており、専攻医が所属し十分な教育を行える施設
連携施設 2 群:常勤病理指導医がおり、診断の指導が行える施設
連携施設 3 群:病理専門医(非指導医)が常勤するか、あるいは病理専門医(病理指導医を含む)が非常勤として勤務する施設

○研修連携施設

専門医研修基幹病院および研修連携施設の一覧
<基幹施設>
群馬大学医学部附属病院
<連携施設1群>
埼玉医科大学病院、獨協医科大学病院、新潟大学医歯学総合病院、防衛医科大学校病院、
埼玉県立がんセンター、高崎総合医療センター
<連携施設2群>
群馬中央病院、済生会前橋病院、日高病院、群馬県立がんセンター、伊勢崎市民病院、
足利赤十字病院、藤岡総合病院、利根中央病院、伊勢崎佐波医師会病院、恵愛堂病院、
老年病研究所附属病院、渋川総合医療センター
<連携施設3群>
 前橋赤十字病院、深谷赤十字病院、富岡総合病院、桐生厚生総合病院、太田記念病院、
群馬県立小児医療センター、館林厚生病院、群馬県立心臓血管センター、原町赤十字病院

世界的な脳腫編病理の研究施設

 脳腫瘍は種類が多いため分類体系が複雑で、一般の病理医にとってはなじみにくい腫瘍の一つです。また、稀な腫瘍型が多数あり、病理学的研究や教育を行う上で症例の収集が容易ではありません。これらの問題を解決するために、貴重な脳腫瘍の症例を日本の一ヶ所に集め、教育と研究を推進させることを目標として、日本脳腫瘍リファレンスセンター(Japan Brain Tumor Reference Center, JBTRC)の設立の気運が盛り上がりました。

 1995年4月、熊本市で開かれた日本脳腫瘍病理研究会の折に、当時、獨協医科大学脳神経外科教授の永井先生の発案を受けて景山名大名誉教授の司会による 「センター」設立推進委員会が開催されました。「センター」設立の趣旨、目的、活動などについて議論が行われ、その結果、「センター」施設として群馬大学 第一病理学教室が指名されました。

 同年10月、名古屋で第2回設立推進委員会が開かれ、具体的な「センター」設立計画案が提示され、討議されました。さらに規約等が整備され、1996年4月、東京で開かれた脳腫瘍病理研究会の際に第3回設立推進委員会が開かれ、「センター」を発足させて、具体的な活動を始めることが承認されました。

 2006年8月、「特定非営利活動法人日本脳腫瘍リファレンスセンター」として群馬県より認可を受け、群馬大学大学院医学系研究科病態病理学分野内に設置されています。

大学院教育研究支援センター

 群馬大学大学院医学系研究科の大学院教育研究支援センター(Education and Research Support Center, ERSC)は、平成21年に「大学院教育研究センター」と「共同利用機器センター」とが合併して発足しました。
 従来の「大学院教育研究センター」は「教育研究部門」に、「共同利用機器センター」は「共同利用機器部門」に 統合・改組されました。いずれも医学系研究科の教育・研究を支援する組織ですが、「教育研究部門」は様々な 教育・研究プログラムを通じて大学院生・研究支援者・研究者を対象とした教育・研究支援活動を行い、「共同利用機器部門」は研究機器の管理・運用や技術支援を通じて大学院教育および医学系研究科の研究を支援しています。